須佐之男命の大蛇退治

古事記 上巻 
須佐之男命の大蛇退治
〔一〕八俣の大蛇
こうして須佐之男命は高天原から追放されて、出雲国の肥川の上流、鳥上という所にお降りになった。

〔二〕草薙剣
ここぞとばかり速須佐之男命は、腰につけておられた長剣を抜いて、その大蛇をずたずたにお切りになったので、肥川の水はまっかな血に変わって流れた。そこで大蛇の中ほどの尾をお切りになった時、御剣の刃が欠けた。これは不思議とお思いになって、御剣の先でその尾を刺し割いてごらんになると、すっぱりとよく切れる大刀があった。それでこの大刀を取り上げ、不思議なものだとお思いになって、天照大御神にこの事情を申し上げ、それを献上なさった。これが草薙の大刀なのである。

〔三〕須賀の宮

日本書紀 巻第一 神代 上
八岐大蛇
大己貴神と少名彦名命
 はじめ大己貴神が、国を平げられたときに、出雲国の五十狭々の小浜に行かれて、食事をされようとした。このとき海上ににわかに人の声がして、驚いて探すとさっぱり見えるものがない。しばらくして一人の小人が、ヤマカガミの皮で舟をつくり、ミソサザイの羽を衣にして、湖水にゆられてやってきた。大己貴神は拾って掌にのせ、もてあそんでいると、跳ねてその頬をつついた。そこでそのかたちを怪しんで使いを出して天神に尋ねられた。すると高皇産霊尊がお聞きになって、「私が生んだ子は皆で千五百程ある。その中の一人の子は、いたずらで教えに従わない子がいた。指の間からもれ落ちたのは、きっと彼だろう。可愛がって育ててくれ」といわれた。これが少彦名命である。